JEIS Aoyama

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シルバーボールペン

シルバーボールペン

このシルバーボールペンを制作するきっかけは、ある女性の顧客様の、「大変お世話になった男の方に何かお礼をしたいのですが、何か良いものがないでしょうか」とのご要望でした。身につけるジュエリーではあらぬ誤解を招きかねない、しかし、身辺に置いて長くご愛用いただけるようなものを、というご要望には、こちらが「なるほど」とうなづきました。このような場合、「これがよい」というアイデアはなかなか浮かばないものです。

しばらく考え、「質の良い筆記具はどうだろう」と思い至りました。ただ単に豪華、且つ高価というのではなく、実用性に優れ、何時までも心地よく使い続けられるもの・・・。結果として、このボールペンが生まれたのです。

私のところで制作するわけですから、素材は銀。形は、外国製の高級なボールペンは軸の細い物が多く、またすべりも硬いのでサイン程度はよいが、日本語の長時間筆記には向かない、という経験を踏まえ、誰にでもなじみがあって一番使いやすい太さと形、鉛筆の六角形にすることにしました。

通常、ボールペンは、使わないときは芯を引き込むメカニズムを組み込みます。しかしこのボールペンにはそのメカがありません。銀の場合、これが出来ないのです。それは銀という素材の問題。軸を引き込んで先端が中空になったとき、そこを何かにぶつけると柔らかい銀は容易に変形、軸が出なくなってしまいます。それで、軸は固定せざるを得ません。

軸が引っ込まないことはデメリットですが、逆に良い面もあります。それは、ボールペンのバランス。通常このメカは軸の後ろの部分に位置します。すると筆記具全体が後ろ重心となり、書き味が悪くなります。むしろ軸の先端が少し重い「前重心」のほうが書きやすいのです。そこでこのボールペンは先端の円錐形の部分を銀のブロックから削り出し、六角形のパイプにロー付けすることによって重量を軸の前部に配置、バランスを前重心にしています。

これはほんの僅かなことなのですが、その後そのことで私自身が驚かされることになりました。ボールペンの発売以来、その僅かな差をしっかりと感じ取られた方から、何度も何度もお手紙をいただくことになったのです。そのほとんどが文筆を業とされている方。まさにプロの感度はすごい。その一言に尽きます。

さて、ボールペンの芯ですが、これは出来る限りどこでも入手しやすい物を、という指向でパイロット社に問い合わせ、世界中で一番広く使われている、と教えていただいた「パイロットのBP芯」を採用しました。最初の一本を作ってから、もう30年を遙かに超える年月、この間、すべて1本、1本の手作りで累計は4000本を遙かに超えました。全く、我ながら良く作ったものですが、この間、「パイロットのBP芯」も変わらず販売されているのは、とてもありがたいことです。

近年、ご要望があり、ゲルインク仕様の物も制作しはじめました。こちらの芯は「ゼブラJK−05」です。これはゲルインク芯は胴の太い物が多く、現在の鉛筆型に収容できる芯が少ないため、あれこれ探した結果の選択です。この替え芯も、少なくとも日本国内である限り、容易に手にはいると思います。

商品の一本目はもちろん、アイデアを提供してくださったお客様の元に、プレゼント先の男性のお名前を彫刻した上、御納品させていただきました。

シルバーボールペン
シルバーボールペンゲルインク用