JEIS Aoyama

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JEISのこと それから

JEIS店内ショーケース

店の評判はまずまずで、売上も悪くありません。しかし、私はそんな外部の評判に気を取られている暇はありません。見る見るなくなっていく商品を埋めなければなりません。それは商品集めを通じて、再度「ジュエリーとは何なのか?」という根本的な問いにぶつかることでした。もう今はプロです。それは素人の勝手な理想とは全く違う世界。お客様に自分の理想を述べ、「じゃ、そう使えるジュエリーはどれ?」と言われれば、「これです」と提示できなければなりません。しかし、現実はひどく心許ない。何とも恥ずかしいことです。そして私のイメージは余りにも漠然としていて作り手にも明確には伝えられない。自分の未熟さを恥じるばかりでした。

「JEIS」は噂に噂を呼び、業界の方々もたくさんいらっしゃいました。一番驚いたのは観光バスを仕立てて甲府からジュエリーの職人さん方が団体でおいでになり、突然中年の男性が40人ほど、わらわらとお店に入ってこられて、店が一杯になってしまったことでしょうか。これも今では笑い話ですが、そんなに興味を引くほど非常識なお店であった、ということは確かでしょう。

開店のてんやわんやが収まるにつれ、ジュエリーの作り手の方々、地方の小売店のオーナー方々にもたくさんのお知り合いが出来ました。全く想定していなかった事ですが、開店当初から商品を卸してくれというご要望が非常に多く、あわてる羽目になりました。そう、仕切り価格の問題はさておき、商品の供給がままならないのです。
作り手にも協力してくださる方が増え、それで間に合う部分もありましたが、ショップの商品の統一感を保つためには、それだけではどうしても物足りないのです。それで結局、自分で作るしかない、と思い始めました。

貴金属装身具を制作する仕事を「錺(かざり)職」と言いますが、これは14、5歳から弟子入りし、修行するような仕事です。私はそのときすでに31歳。はっきり言えば、彼らと同等の技能を身につけることは無理な話です。同じレベルには絶対到達しません。ならば、出来ることをするしかない。店の隅に小さな彫金台を置き、出来ることから始めました。私が非常に運が良かったのは、多数の職人さんやジュエリーデザイナーがお店に集まってきてくださったこと。彼らからあれを聞きこれを聞き、親切なアドバイスを得て少しずつ学び、試行錯誤の末、1年後には小さなアトリエを持ち、自分で作ったものを店に並べるまでになりました。